皆さんは、今まで人間の類型を4つのタイプで分けて説明する理論をどこかでご覧になったことがあるのではないでしょうか。このような理論は弊社が確認しているだけでも30以上もあり、それぞれが類似した4つの要素で類型を説明しています。実は、このような4つの要素からなる理論(四者構成理論)を最初に打ち立てたのはユングだったのです。

対立要素を明確にモデル化したユングの四者構成

 ユングは「情報入手」と「情報処理」の2組の機能について、それぞれ2つの要素からなる、計4つの『心理的機能』を示しました。さらに、それぞれに外向性と内向性の『心理的態度』があることを看破しました。この4つの要素による分類がシンプルでかつ強力なものであったため、次々と類似の理論が構築されることになりました。

しかし、ユングの類型論は単に4つの要素を使って違いを認識し、表面的対応方法を理解させるような皮相的な類型論ではありませんでした。ユングは、それぞれの要素は対立する要素を持っており、一つの心理的機能を積極的に使うようになると、もう一方の対立要素は無意識の世界に送られ、影の要素となり、発達をとげない状態にとどまる傾向があることを示しています。シンプルですが、論理的整合性の高い、美しいモデルと言えます。

無意識の要素の動的特性

 ユングは、それぞれのタイプが有する影の側面について、その動的特性に注目し、それらがどのように私たちの言動にネガティブな影響をもたらすのかを明確にしていきました。 人は、ユングのタイプ論を理解することを通じて、自分自身を「意識」と「無意識」の両面から理解することになります。

 

 実は、無意識に送り込まれた心理的機能や態度は、重要な場面やストレスがかかっている状況下で、意識の世界に飛び出してくる動的特性を持っています。ところが、その飛び出してくる心理的機能や態度は発達の遅れたものであるがゆえに、大きな問題を引き起こします。 多くの皆さんが頭を抱えておられる社内におけるハラスメントの問題、その他、様々なリーダーシップやコミュニケーション、意思決定上の問題の原因は、ほとんどのケースで無意識の要素が関係しているのです。私達のほとんどの問題行動や機能不全的な言動が、この「無意識の」世界に送られた「心理的機能」や「心理的態度」が原因になっているのです。

再発を繰り返す無意識の要素が引き起こす問題

 無意識の要素が引き起こす現象は、何度も再発を繰り返します。典型的な例はハラスメントで、ハラスメント言動は、通常、強い指導を受けても、どのような説明を受けても再発する傾向があります。このコースでは、様々なコミュニケーション上、そして意思決定上の社員の問題行動の発生を抑えることに貢献します。つまり、タイプ論では、意識と無意識の両面から人間の向上を扱っている理論なのです。

 

 それぞれの社員の持つ問題点は、ある意味では最も指導がしにくい要素と言えます。弊社が提供しているコースでは、参加者は、誰からも指摘されなくなった、様々な問題言動に対峙し、自己開発をしていく機会を得ることができます。 一人ひとりがストレスを受けることなく、人間についての学習を楽しみながらそれを実現できます。 

 

 また、タイプ論の理解を通じて、「人間そのものへの理解」が深まり、自分と違った心理的タイプに偏った人達への対応の仕方やコミュニケーション上の留意点を学習することができます。結果として、戦略的な「対人対応力」が身につくことになります。ここで得られることは、あらゆる階層で働く人のレベルアップと効率性の向上に貢献します。ここで獲得できる知恵は、マネジメントにも販売活動にも、一般的な人間関係にも、そのまま活用できます。

個性化という究極の目標

 もう一つ、ユングの類型論の重要なポイントを紹介すると、彼は「個性化」という究極の目標に向かって歩むことの重要性を強調していることが挙げられます。これを一言で言えば、無意識の世界に残してある発達の遅れた機能の発達を促進し、意識の世界に呼び込み、意識の世界で働いている要素と統合することです。無意識の要素は原始的な類似性があるので、個性的とは言えません。意識の世界でそれらの機能を個性的に発達させる過程を含むため、個性化の過程と呼ばれているわけです。個性化は自己実現の方向を目指しているとも言えるのです。

 

 ところが、ユングの後発理論で学習した多くの方は、このような要素には目を向けず、「自分のタイプ」を強く意識するようになる傾向があるのです。自己のタイプ、あるいはスタイルを知って満足し、それに対する「固着化」が起こるのです。これによって、多くの類型論コースを受講することで、受講者を発達させるどころか、彼らの成長の可能性を封じ込め、問題言動を助長させる可能性があるのです。この固着化現象は、実際のビジネス組織で多発している深刻な問題なのです。

 

 コア・コンセプト・ラボラトリーのユング・コースは、「人間の基本能力を高める」ことと、「対人対応力を高める」ことに焦点を当てた貴重なトレーニングです。類型論を学ぶなら、本物のユングタイプ論を学習してみましょう。

曼荼羅 (まんだら

 これは、1916年にユングが最初に描いたマンダラ風のイメージです。フロイトとの対立と決別の経験を通じて精神分裂気味になっていたユングの頭に浮かび上がっていたモデルです。彼は、類似の4つの頂点を持つ多数のマンダラ風のイメージを意味も判らず描く経験を持っていました。彼が描いた曼荼羅には、重要な4つの要素の存在が暗示されているとともに、対立要素を統合するイメージが示されています。

 

 そして、精神を病んでいる彼の患者さんや精神を構築途中にある子供たちも類似のイメージを描く傾向があることを発見し、いくつかの書物で報告しています。「全体性を回復したい」、「全体性を獲得したい」という精神の働きかけがこのイメージを浮かびあがらせた可能性があります。言うまでもなく、このイメージ図はユングのタイプ論のモデルの原型になっているのです。彼はこのようなイメージを「全体性の元型」を呼びました。ともあれ、四者構成理論の原点をここに発見することができるのです。

 モノコルス

 これは、「モノコルス」という名前でユングの『結合の神秘』の中で紹介されているイラストです。皆さんはここに登場している王様や司祭の表情を見て何を感じられるでしょうか。彼らは、お互いに不足しているものをにこやかに補完し合っています。私達は自分の特徴について、偏った認識を持ち、自己肯定感に浸ったり、自分と類似した人を高く評価したリする傾向を示します。一方、自分が弱みとする機能を強味とする他者を低く評価しがちです。

 

 しかし、私達は、自分が弱みとしている機能を強みとする他者を尊重し、協働するという生き方もできるのです。不足しているものを補い合い、ともに成果を生み出す態度です。自分自身の内面で「個性化」を実現し、全体性を獲得するだけでなく、チームの力でそれを実現することもできることをモノコルスは暗示しています。個性化の実現を個人で目指す時も、チームの力で目指す時も、モノコルスが示す「雅量」や「謙虚さ」が大きなカギを握っているのです。

 

 私たちは、自分たちの強みを効果的に発揮するために、弱みの持つ動きや特性に注意を払う必要があります。そして、多くの弱みの動きは、無意識に関わっていることを理解する必要があります。

 コア・コンセプト・ラボラトリーでは、一般社員向けと管理職向けにコースを用意しています。これらのコースでは、真正のユングのタイプ論を学習できます。楽しみながら人間について学習しつつ、自己の向上と対人対応力の向上を実現する良い機会を社員の皆様に与えてみませんか? 組織の人材力の底上げやチームワークの向上にも貢献します。

 

コア・コンセプト・ラボラトリーが目指していること

コア・コンセプト・ラボラトリーでは、カール・ユングを中心とした心理学とピーター・ドラッカーを中心としたマネジメントの研究活動を推し進めながら、いかにそれらをビジネスの効率化と結びつけることができるかを探求しています。主要テーマごとに、何がコアな要素なのかを探り出し、それを平易に、トレーニングを通じて参加者と分かち合っています。今まで当たり前のように行われていたトレーニングの在り方にチャレンジすることを考えています。私たちは、顧客との関係については、「真正のトレーニングの提供」 、「学習定着のための最大限の努力」、「顧客企業のコストに対する配慮と効率の追求」という3つの行動原理を持っています。

「真正のトレーニングの提供」という私たちの社内のスローガンは、本物を追及するという私たちの基本的態度を示しています。いい加減な理論は使わない、いい加減なものは紹介しない。本物を追及し、本物の伝道者になることを考えています。

 

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このコースについての詳しい情報は、弊社ホームページでご覧いただけます。